父の涙と人生

本人もビックリしている。

 

父はとにかくよく泣く。

と言うか、こんなに泣く人とは思わなかった。

 

まず最初に泣いたのを見たのは、それこそ母の病気の診断を病院へ聞くのに付き添ってくれ、と頼みに来た時のことだ。

「(母が)可哀想だから頼んます」

と言いながらホロホロと泣き始めて、ビックリしたのを覚えている。

 

そして、病気への看護介護が始まってからは、私と母が喧嘩したら泣き、母が文句言ったのを我慢しては泣き、看護師さんから労われては泣き、ともう回数は覚えてないくらいに泣いている。

 

ちなみに母は、病気療養開始してから亡くなるまで、完全に涙を流したのを私が見たのはたった一回だけ。

まだ療養開始した頃の2月の事だったと思うが、突然大粒の涙を流して、どうしたの?!と言うと布団を被り不貞寝してしまったのだった。

なので、何故泣いたのかも分からなかったし、それ以降泣くことはなかった。痛みが強く出た時でも泣くことはなかったし。

 

そして今日も、まず私が役所から帰宅したら、ありがとうありがとうと泣いてしまったので、大丈夫だってば、と諭し、夕方には私の接骨院行きに関してちょっと言い合いになり又泣いてしまった。

 

放置して接骨院へ行って戻ると、泣きながら「大丈夫だった?」と言うので説明すると、また泣き出す始末。

 

そこで話をすることにして、父は話したそうにしていたので、全部話してもらった。

 

看護師さんや医師などからも、母が旅立った後の父のことは心配されていた(叔母からも)。

確かに母が亡くなったことは悲しかったようだか、何かそれまでずっと世話をしてきてそれが無くなった今、それよりも前の人生について思い出したりして、一体これまでの自分の人生何だったんだろう、、となって、複雑な心境から泣いてしまっている、と言う事だと父は話してくれた。

また、母についてはもう愛情という感じではない、とまで言っていた。(母の性格からも対等さは感じてないのもあり、家族ではあるが愛情は無いとはっきり言っていた)

 

確かにあの母と一緒にいるのは、正直並大抵の人では無理だし、よく一緒にやってきたと思う。(それは昨日来た叔母も何度も言っていた)なので、父にはもうこれからは自由なんだから、好きなことやりなよと言った。

例えそれが競馬とかパチなどのギャンブルだって別に良くて、とにかくここまでの人生のことを考えると、そのくらいしても問題ないと思ってることを伝えた。(ま、さすがに限度はあるけどもね)

 

勿論母の旅立ちについて、そうは言っても影響がゼロではないとは思うので、その辺は上手く昇華していければいいなとは思ってるが、父も齢90にして、新しい人生がまた始まってしまったんだな、と言うのを目の当たりにして、私もまだこの先も色々とありそうだなぁ…と傍から見ていて思ってしまった。

 

明日はベッドを返却する。

これで本当に部屋から母のいた感じがかなり薄れてくることになるだろうし、父の生活なども変わっていくことになる。

 

それでもまた泣くんだろうなとは思うけども。